A-Forum e-mail magazine no.54(01-10-2018)

「まちづくり」で何をやるか


釜石市唐丹町小白浜に、震災以来頻繁に入って、復興まちづくりのための活動を続けている。A-Forumにも、さまざまな形で大なり小なりお世話になっている。3年前には、(株)唐丹小白浜まちづくりセンターを1800万円の資金を集めて立ち上げ、昨年は伝統木造工法による家「潮見第」を住居兼事務所として竣工させた。今年も、9月14日から16日まで第7回唐丹まちづくり意見交換会を開催し、片岸地区の被災跡地の計画について住民の意見をもとに案を提案している。

かってに「まちづくり」という言葉を使っているのだが、何をどこまでやるのか、改めて考えてみると分からなくなってくる。未来を描くことが中心になるとはいえ、また拠点を作ったものの、せいぜい月1・2回程度、年延べで50日程度の滞在で、発信や交流は出来ても「やる」ところまで及んでいない。

建築に携わるものとしては、家並みや景観を実際に作っていくことが目標になると良いのだが、復興住宅や小中学校のプロポーザルに応募したり、潮見第を建てたりというくらい。小白浜の被災跡地に海の広場計画、片岸地区には桜並木の計画を描いても、まだまだ見えない。

商店会や事業展開としてのまちづくりが、まちとしての活気や潤いを生むということでは、まちの活気をどう取り戻すかが大切に思うが、外の人間がどこまでやれるかと考えると容易ではない。

現在のまちづくりは、まさに地元と外から乗り込んだわれわれの意見交換。それだけでまちづくりをやっているというのもおこがましいが、ここから先に進む状況が見えていない。それでも、震災直後に、多くの団体が三陸に入って、住民と共に計画を論じたり、絵を描いて行ったりしたが、今はその動きは少なくなっている。

現実には、東日本震災の仮設住まいの人はまだ5000人以上も居ると言われているし、自治体が建築基準法上の災害危険区域指定したところの計画はどこも先が見えないところばかりだ。楽観的にとらえると、今回の意見交換会でも、3日間にわたり10人が外からやって来て、地元の方たちと昼間の意見交換に加え、夜も懇親の場を持ったり、初日は、他に学生10人を引き連れて3時間ほどまち歩きをしたりと言うこと自体が、すでにまちづくりの一部分であると考えても良いのかと思ったりもする。1年間で考えるとほんの人口の2%くらいの人間が1%くらいの時間の共有ではあるが。  過去、すなわちこれまでどれだけのことが蓄積され、未来に活かされるかは、まさに未知数ではあるが、それでも、7年間がまだ、これから5年10年は続けられると思うし、時間が経って疎遠になる人もいれば、唐丹に来ることで新しい友人が増えたりもするので、そのことは確実にまちづくりにとって財産になっている。

 まちづくり会社立ち上げにあたって、事業展開も夢に描いたりしてはいるが、自分をその気にさせるためには、まちづくりって何でもありというのが答えかも知れない。

(JK)


第25回AF-Forum 

Marcus Vitruvius Pollio (ウィトルウィウス)の建築十書を学ぶ

 

コーディネーター:和田 章

パネリスト:宇野求(東京理科大学教授)

モデレーター:布野修司(日本大学 特任教授)

日時:2018年10月15日(月)17:30~19:30
場所:A-Forum
参加費:2000円(懇親会、資料代)
参加申し込み:こちらのフォーム よりお申し込みください。
*「お問い合わせ内容」に必ず「第25回AFフォーラム参加希望」とご明記ください。

12ヶ月の英文名の7月July はジュリアス・シーザー、8月Augustはアウグストゥスを表している。ジュリアス・シーザーの後を継いだアウグストゥスがローマ帝国の初めの皇帝である。
ジュリアス・シーザーのもとで活躍した建築技術者がウィトルウィウスであり、アウグストゥスの時代に建築の基本思想をまとめた建築十書をアウグストゥスに献納している。紀元前の話である。

ここに載せた図の左に座っているのがアウグストゥス皇帝、右に立って建築を説明しているのがウィトルウィウスである。
西洋建築史の講義でウィトルウィウスのことを聞いたと思うが、忘れていた。大学院を卒業したばかりの頃、建築学会主催の何百人も集まる大きな講演会で、坪井義勝先生が基調講演をされた。はじめに「この会場にいる君たち、ビトルビウスの強・用・美を知っているか、知っている人は手をあげなさい」と言われた。嘘はつけないので、恥ずかしながら手を上げずにいたが、それほど多くの人が手をあげたわけではなかった。
その後に調べ、ウィトルウィウスの言葉「強用美」は、建築のことや研究のことで悩んだ時の心の支えになった。色々なプロジェクトで設計や施工の議論をするときに「そんなことはできない」という担当者に「だって、建築の基本は強用美でしょう」といって説得してきた。
英語訳で、十の書物のように翻訳されたので、「建築十書」と言われているが、建築全体について書いた一冊の本であり、1章から10章までで構成されている。
東京理科大の宇野求先生は、建築十書の「強用美」より前の章に、都市や城を作るときは適地を選ぶことから始めねばならないと書いていることを教えてくれた。豊臣秀吉や徳川家康などの将軍も同じことを考えたはずである。
東日本大震災で大津波に流された村や町、最近の豪雨災害で江戸時代には遊水池を兼ねていた農地にまちを作ったところに大きな浸水があったこと、北海道の地震災害で起きた大きな崖崩れの下に家々があったことなどを見て、適地でないところに人々が暮らすようになったことに大きな問題があると思う。
我々、構造設計者は、市民の安全、安心した暮らしを守ることが基本的な仕事である。建主、建築家と仕事を始めるとき、その建築の強用美を求めることは当然として、建設地の適否、地盤の適否を見極めることも重要な仕事であるように思う。
10月15日のフォーラムでは、宇野求先生に建築十書についてお話ししていただき、今の建築、これからの建築について議論したい。


日本学術会議公開シンポジウム / 第6回防災学術連携シンポジウム
「あなたが知りたい防災科学の最前線 首都直下地震に備える」

近年首都直下地震の発生が危惧されています。日本学術会議や防災学術連携体(56学会)には、様々な視点から、首都直下地震の災害の軽減に向けて研究を続けている研究者がいます。防災においては「自助・共助」「地域での連携」が大切で、消防団、町内会や自治会、学校や職場で、防災訓練や教育が続けられています。 シンポジウムでは、地域の防災力の強化に科学を役立てるため、市民の皆様が知りたい防災科学の最前線をわかりやすくお伝えします。

日時:2018 年 10 月 13 日(土)16:30 ~ 19:00/同フロアにてポスター掲示(13日・14日)
会 場 : 東京ビッグサイト会議棟7F国際会議場
  主 催 : 日本学術会議 防災減災学術連携委員会、防災学術連携体
参加費 : 無料(ご家族、お友達などと多くの方々のご参加により、有意義な会合にしたいと思います)
申込み : 事前申込はこちら。(当日の直接参加も可能)
*A-Forumでは申し込み受け付けを行っておりません。
ご案内 : 特設ページ

発信:防災学術連携体 運営幹事 和田 章、依田照彦