A-Forum e-mail magazine no.86 (11-06-2021)

SDGsと建築と社会

国は、2050年までにカーボンニュートラルとか言っている。建築学会でも、SDGsの特別委員会などがあって、これからの建築や社会のあり方の議論をしている。直接関係するところは、17の目標のうち、③.すべての人に健康と福祉を、⑦.エネルギーをみんなにそしてグリーンに、⑪.住み続けられるまちづくりを、⑫.つくる責任つかう責任、⑮.陸の豊かさもまもろうあたりか。

コロナ禍で、人が密に集まることを避ける、人前では、マスク着用など、なんとなく息苦しい状況が続いている。そんな状況でも、分野で差はあるものの経済は動いている。半面、自然回帰が少し見えていた。「持続可能」のために一番気を付けなければいけないことは、「経済成長」の神話から脱することではないか。

自然の、植物や動物の世界の持続可能性に見習おうということだ。建築物を設計するときに、さまざまな条件を考えて設計する。建築物を施工するときにも、さまざまな条件を考えて施工する。その原点は、経済成長が目的でないことは明らかである。エネルギーについても、建築面積当たりのエネルギー使用量は、子供のころと比較すれば明らかに急激に増えた。いくらエコ技術が進歩しても、いたちごっこで、ある程度は必要かもしれないが、それで持続可能に向かうとは思われない。

20年ほど前に、大学の柏キャンパスに近い90坪の土地に13坪の家を建てて、2006年から2014年まで単身で住んだ。一番最初に目に飛び込んだのが、庭に自然に生えてきた山萩である。初夏の新芽の緑は明るく柔らかで美しい。ぐんぐん大きくなる。7月ころには小さな赤紫の花を付け、8月には終わる。葉や幹の枯れる11月までには、根本からすべて伐って、来年また出てくるのを待つ。少しずつ株が大きくなり、元気な笹やドクダミに負けることなくしっかり1メートル平方を占有している。伐った幹は、直径1㎝~1.5㎝位、長さ1.5m位のものが30本から40本。これが、夏の間に空気中のCO2を太陽エネルギーを使って個体の炭素にしたのだと思うと、持続可能社会にとって緑の意味がよくわかる。

日本の都市は、ヨーロッパ、アメリカなどと比べ、どこも緑が少ない。江戸から明治、関東大震災、太平洋戦争、新しい時代を迎えて作られた都市計画では、もっともっと緑が描かれてあったのに、いつの間にか、建造物やアスファルトで覆いつくされてしまった。持続可能性のない社会を作ってきたことをしっかり反省し、変える努力なしには、2050年までのカーボンニュートラルは、言葉だけに終わってしまう。どれだけ自然に寄り添い、自然から学べるか一人ひとりの課題でもある。

(JK)


第21回 AB(アーキテクト/ビルダー「建築の設計と生産」)研究会
建築生産を支える専門職(サブコントラクター)の世界Ⅱ

コーディネーター:布野修司+安藤正雄+斎藤公男

日時:2021年7月10日(土)14:00〜17:00(仮)
会場:オンライン(Zoom)

企画趣旨説明:中村良和
プレゼンテーション:
1「基礎鉄筋の世界」森山慶一(メークス(株)会長)
2「建築解体の世界」澤育彦((株)信和 代表取締役社長)、河野太一((株)信和 支店長)

参加申し込み:こちらのフォーム よりお申し込みください。
*「お問い合わせ内容」に必ず「第21回AB研究会参加希望」とご明記ください。

AB研究会では建築は施主と設計と元請け企業そして直接工事を担当する下請け専門職の関係性に焦点をあてた議論がなされている。現在の建築生産は部品化、工業化の進展により、工事職種の統合化や多能工化などの変革がおきていると共に、現場専門職工事を支える部品メーカーや流通などの様々なバリューチェーンも含めた専門職(サブコントラクター)の重要性が非常に高くなってきている。建築生産の諸課題は元請けや現場で直接工事を担当している下請専門職だけでなく、それを支えている多様な支援職能も含めた問題として捉えることが必要だと考える。
 前回(第19回AB研究会)は、瓦工事((株)坪井利三郎商店)そして鉄加工メーカー(カツデンアーキテック(株))に焦点を当てた。職能も業態も全く異なるが、独自の専門職技術を極めることでその事業領域を広げており、単なる下請けの立場を超えて設計や流通、元請も含めた事業展開をしており、また、両社ともに「技術のコアは人材と専門職業務の継続」にあるということで、職能マイスター制度や工場品質展開など様々な取組みを展開している。生産現場の担い手不足は建築現場だけで無く製造業全体の問題であり、日本のものづくり文化のステータスアップの必要性が再確認される。
今回は、建築工事の始まりと終わりということで、基礎工事と解体工事を取り上げる。現状と課題を共有しつつ、さらなる交流や協業の可能性を探る議論をしたい。現在の建築現場を支える専門職(サブコントラクター)の役割、職能、業態は想像以上に広がりと深化をしている。元請け企業はもちろん施主や設計もこれまで以上に直接、専門職(サブコントラクラー)と交流、協業をする回路を作ることがより自由度の高い建築供給体制に繋がる予感がある。


地域の担い手をどう育てるか

ネット中継(2021年6月25日、14時–18時)

建設トップランナーフォーラム(http://kentop.org/

元気な各地の建設会社が北海道から沖縄の地域の経済・活動を率いて頑張っています。

約15年前に始まった建設トップランナー倶楽部(各地で頑張っている地域建設会社の集まる会)では、和田は顧問を務めていますが、毎年テーマを決めて建設トップランナーフォーラムを開催しています。今年は「地域の担い手をどう育てるか」について発表があります。建築の仕事をされている方々にも、大変に重要なテーマですので、ぜひ、多くの方にネット視聴いただきたいと願っております。

地方活性化は重要な課題であり、赤羽一嘉国土交通大臣、野上浩太郎農林水産大臣のご挨拶もあります。参加は無料ですので、以下のフォームからお申込みください。

https://ws.formzu.net/dist/S87879789/

当日は、建設トップランナー倶楽部のホームページから視聴できるようになります。(和田章)

 
神田 順 まちの中の建築スケッチ 「犬吠埼灯台—今も活躍する歴史的建造物—」「津雲邸—昭和初期の文化財—」/住まいマガジンびお
「住まいづくりの論理」 住まいの百科事典(丸善出版、2021)

SNSはじめました
この投稿をInstagramで見る

A-Forum Staff(@aforum4)がシェアした投稿


Instagram https://www.instagram.com/aforum4/
FaceBook https://www.facebook.com/profile.php?id=100068847421870
Twitter https://twitter.com/AForum9