第50回AFフォーラム「立ち上がれ愛に満ち溢れる構造設計者たち ー能登半島地震と木造住宅の甚大な被害ー」

日時:2024年02月29日(木) 18時~20時
コーディネータ:コーディネータ:和田 章
パネリスト:高橋治(東京理科大学教授)、北茂紀(北茂紀建築構造事務所)、布野修司(滋賀県立大学名誉教授)

お申込み(リンク先にて会場参加orZoom参加を選択してください。):https://ws.formzu.net/fgen/S72982294/

Youtube:https://youtu.be/scU_G888vmw
能登半島地震では築百年の立派な木造住宅も壊れた。建築技術は経験によって育つのであって、何百kmも離れたところで起きた地震被害の経験は、別の地域の住宅の技術改良になりにくい。地震被害を受けた地域の大工や棟梁も、大きな地震はもう来ないと考え、今までと同じ方法で次の住宅を作ってしまうこともありうる。
平地は田んぼや畑に使われ、山裾に家を建てることは日本のどこにも見られ、崖崩れの被害に遭いやすい。これも簡単に変えることはできず、誰も止めようとしない。
木造住宅はその基礎地盤が動かないことを前提に、柱ごとの独立基礎またはこれらを繋いだ格子状の布基礎の上に建っている。能登半島の海岸近くの砂地盤は至る所で液状化を起こした。骨組が弱いだけでなく、基礎が乱れた動きを起こすと、その上の骨組は脆く壊れてしまう。
まちや村そして家々は普通の工業製品に比べて圧倒的に寿命が長い。大地震は滅多に来ないから壊れない。昭和に建築基準法が制定され、その後、平成・令和になって建築基準法は改正され、学会規準が作られているが、適用されていない住宅が多く残ってしまう。原子力発電所や石油プラントを除くと、建築構造に関する法律は過去には遡らないことになっている。
昨日まできちんと建っていた住宅は、明日も同じように建ち続けるとほとんどの人が考える。耐震性が十分でない建築の補強は所有者の決断の問題であり、法律で強制することはできない。個人が耐震診断は行ったとしても、具体的な耐震改修はその動機も含めて実行するのは容易ではない。
多くの研究者、構造設計者は、木造住宅の耐震性向上の研究を進め、耐震補強や耐震改修の技術開発も行っている。日本人の住み方に関する研究も行われている。基礎に注目すると、最近の住宅では住宅全体を支える基礎マットが用いられるようになっているが、古い住宅の基礎はバラバラに動きやすい。骨組の補強だけでなく基礎部分の平面的な一体性を高めることも必要だと思う。
これらの考えや対策が日本の津々浦々に広がらないのは、法律改正や学会規準の問題ではなく、研究者・設計者などの専門家の説明や覚悟に説得力がないからだと思う。
立ち上がれ愛に満ち溢れる構造設計者たち